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おはようございます!

PTA本部役員歴3年、PTAブロガーのいさおです。



今日も書評シリーズです!




書評シリーズを書くきっかけと書いてる内容 


PTA本部役員を3年経験し、PTA問題の情報を集める中で気になっていたことの一つに、働く母親が増えたことの影響がありました。

PTAって戦後の専業主婦モデルをベースに設計されていることが多いようで、社会問題であるジェンダー平等を考えていくことで、解決のきっかけの参考となる情報を発信できたらと思います。



こんな人に読んでほしい


ジェンダー平等について考えている人やPTA問題の根本を追求したい人に読んでもらいたいですね。




では今日もピーブロ(PTA2.0ブログの略)よろしくお願いします!




新しい労働社会 -雇用システムの再構築へ 濱口桂一郎


濱口さんは官僚・大学教授を経て、現在は「労働政策研究・研修機構」で研究をしておられます。日本の労働問題について歴史を紐解きながらやさしく説明してくれる本です。2009年の本なので情報は少し古いですが、それでも歴史を学ぶことで労働問題、特に男女賃金格差が生まれている原因などを詳しく知ることがでる一冊です。



日本型雇用システムの特徴と問題点

「日本型雇用システム」て聞いたことありますか?
  1. 終身雇用
  2. 年功序列
  3. 企業別組合
この3つを答えるとOKです。これらは外国社会には見られないシステムなんですね。日本だと当たり前の制度が世界では特殊なんだってのは押さえておくべきポイントです。

 
日本の雇用契約では「どういう内容の仕事をするのか?」ということが極めてあいまいで、「この会社で働く」という包括的な契約となっています。この慣習がメチャ大事で、先の日本型雇用システムの3つ特徴すべてに関わっています。つまり日本の会社(役所も)が重視するのは本人の業務遂行能力よりも「長期的なメンバーシップ」という考え方になるんです。

 
欧米では経理とか法務とかの決まった仕事に従事し、熟練していくことでスキルも給与も上がっていくシステムなんです。日本の会社って人事ローテーションは当たり前ですが、これは欧米と真逆で専門分野のスキルアップの機会をなくしているんですね。専門性が身につかないから転職もしにくいし、異動のたびに仕事を覚え直さないといけないから、生産性も低くなります。でもその一方で、終身雇用が確保されているのでスキル不足でもクビになって収入が途切れるようなことはないわけです。

 
そして日本型雇用システムが適用されるのは実は正社員のみであり、非正規労働者はこの仕組みからこぼれ落ちています。もともと非正規労働者である、主婦のパートや学生のアルバイトは「正社員である夫(あるいは父)の収入」の補助的なものであったこと(=生活給でない)から、賃金の低さや雇用の不安定さは長いあいだ問題視されなかったんです。フリーターやシングルマザーが増えてきたことで社会的な問題としてクローズアップされることとなりましたが、これも比較的最近のことですね。


長時間労働の問題

2000年代に話題になったホワイトカラー・エグゼンプションなど、労働時間の規制を外そうという動きがありました(今もある)。この法案は「時間外手当の支給」と「労働時間の管理」という二つの側面があったのですが、マスコミが「残業代ゼロ法案」と取り上げたため、「定額働かせ放題」など、賃金の話が中心となってしまいました。生命の安全を守るために長時間労働をどう管理していくのかという部分があまり議論されなかったのは残念でなりません。

 
20004年の政府の会議でワーク・ライフ・バランスの重要性が取り上げられ、「拘束性の強い正社員と拘束性の弱い非正規の二択」を問題視しています。


雇用の安定と非正規・時間外の関係

日本の正社員は終身雇用が確保されている場合が多く、海外に比べて雇用が安定しています。しかし、景気が悪かったり、企業の業績が悪いときには何らかの調整が必要なのは変わりありません。それが派遣切りといった非正規労働者の雇い止めや時間外労働の削減などで達成されているのです。


この調整弁があるからこそ、正社員の長期雇用が実現されているのですね。また、若者の非正規労働者が多く、なかなか正社員になれないのには、日本のビジネスマンの教育訓練の機会が企業の中で正社員に対してだけ与えられていることが多いことが挙げられるようで、非正規にも社内研修が受けられるようにするなどの取り組みが重要となってくるということです。


日本の賃金はどうやって決まるのか

日本の賃金は「同一労働同一賃金」にできないのは、年功序列が一因です。確かに、中堅社員が異動して後任に若手社員がきても仕事内容が同じだったりしますからね。そして賃金は年功と併せて「査定」で決まっている場合が多く、この査定も結構あいまいなんで、実際の労働の質よりも、会社への忠誠心など態度で決まったりしちゃうんです。(欧米は職務内容で給料が決まる)

 
年功序列は、若いうちは安めに設定されていて中高年期に多く支払われるという意味で、生活給の側面があり、企業内再配分の貯蓄という風に考えることもできます。このため、これから給料が上がっていく世代にとっては、欧米のように職務給に移行することには反発が出ちゃいますし、子育てや住宅ローンなど給料の上昇を見越してライフプランを立てていることから、大きな問題が起こることが想定されます。


また、査定は基準があいまいであることから、男女差別があったとしても表面化しにくく、男女間の給与格差がなくなりにくい要因でもあります。


著者の提言

働き方については、拘束性の高い男性をデフォルトと考えるのではなく、拘束性の少ない女性の働き方を男女共通のルールに持っていくことが大切と考えられます。また、年功序列を是正していくためには生活給の側面がある部分を公的な制度でまかなっていく、ヨーロッパ諸国の方法への切り替えも有効となります(児童手当や住宅助成など)。それから非正規労働者の問題を解決していくのに、企業別の労働組合に非正規が入ることでその声も届きやすくなると考えられています。



まとめ

新卒で企業に入り、定年まで人事異動を繰り返しながら働き、いろんな業務を経験しながら給料が上がっていくという仕組みは日本独自のものなんですよね。本を読んで改めて実感しました。


そのような仕組みの中で、男性の長時間労働や転勤など、妻は主婦という前提で成り立ってきた上、給与の査定の仕組みも女性活躍を阻害する要因の一つであるという考えも納得です。


歴史を見ていくと、女性活躍を進めようといっても、その反対側で生活に困る人が生まれたりしないようにバランスよく進めていく必要があるというのがよくわかります。


では、今回はこのへんで!




▼今回紹介した本




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